女性の病気について

乳癌

乳癌は、40~60歳を好発年齢とする病気です。主要部位別の年齢調整罹患率(1年間に新たに発生する患者数)は、対人口10万で約44人です。これは、女性の癌としては第1位です。

癌の発生を抑制している癌抑制遺伝子の一部に変異があると、家族性の乳癌・卵巣癌が発症することが知られています。したがって、近親の血縁者に卵巣癌・乳癌患者がいる場合は、発生率が高くなることがあります。

妊娠中あるいは授乳期であっても、乳癌を発症する可能性はあります。しかし、妊娠中から授乳期にかけては乳腺が発達するので、乳房の腫瘤が発見しづらくなります。また授乳期では、乳汁がうっ帯している状態と乳癌の鑑別が難しい場合もあります。そのため、この時期の乳癌は、発見が遅れ、癌が進行してしまっていることがあります。

乳癌の代表的な症状には、乳房の腫瘤感や乳頭からの分泌物等があります。乳房の腫瘤を形成する病気は、乳癌以外にも乳腺線維腺腫や乳腺症等があります。乳癌では、一般に片側性で、硬い腫瘤として触れます。表面が凸凹とした不整形で、疼痛を伴うことは少ないと言われています。可動性は病状の進行と共に不良になります。乳癌で、乳頭からの分泌物を伴う場合は、サラッとした液体や血性であることが多いようです。また湿疹を自覚することもあります。湿疹が乳頭、乳輪部のただれたような変化であった場合は、乳頭近くに発生した癌が表皮内へ進展している可能性もあります。
いずれにしろ、腫瘤の触診や分泌物だけで自己判断することは危険ですから、症状に心当たりのある場合は、速やかに専門医(乳腺外科)に受診して下さい。

乳房の病気は、マンモグラフィー、超音波断層法等により鑑別します。また必要に応じて、穿刺細胞診や生検といった検査も実施します。マンモグラフィーは、乳房の腫瘤における乳癌の鑑別だけではなく、腫瘤を触知しない段階での乳癌の検出に有用です。腫瘍陰影、石灰化像、周囲組織の変化等の所見をもとに診断しています。超音波断層法は検診においても用いられますが、触診やマンモグラフィーにより検出された腫瘍の鑑別にも有用です。乳癌と乳腺線維腺腫の鑑別等に用いられます。

乳癌では、癌の進行の程度により、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法等を組み合わせて治療します。乳癌の場合、癌の進行の程度は、腫瘤の大きさ、リンパ節や離れた他の臓器への転移の有無により、0~Ⅳ 期の5段階に分類しています。0期やⅠ期の5年生存率は90%以上であり、他の癌同様に早期発見が重要です。癌の早期発見のためには、乳癌検診をきちんと受けることが大切です。