女性の病気について

骨粗鬆症について

骨粗鬆症は、骨が脆くなり、骨折をひき起こしやすくなった状態のことをいい、女性の生命と生活の質に多大な影響を及ぼす病気です。女性ホルモンが骨の健康に重要な役割を担っているので女性に多く、1100万人いる骨粗鬆症患者のうち女性が860万人という推計もあります。骨折してこまることは、痛みだけではありません。一度背骨が折れた場所は治らない上に、他の背骨が折れやすくなり、神経や内臓を圧迫されて様々な症状と付き合っていかなくてはならないこともあります。大腿骨が折れると、寝たきりになることも少なくなく、WHO(世界保健機構)では生命を脅かす疾患として骨折を挙げています。

一方、近年の骨粗鬆症研究には目覚しいものがあります。以前は、骨量が骨の強さと同じように考えられていましたが、最近は量ばかりではなく質も問われるようになりました。つまり、骨密度(量)が高くても、骨の壊れるスピード(骨代謝回転)が速かったり、目に見えない小さな骨折があったり、骨の細かい構造が保たれていない場合には骨の強さは損なわれるという考え方です。それに伴い骨密度が低い人(若年成人平均の70%未満)だけではなく、骨折の家族歴がある人、飲酒・喫煙の生活習慣のある人、ステロイドなど骨に影響のある薬を飲んでいる人の中にも治療が必要になる場合があります。特に女性のうち、高齢者、痩せている人、早くに生理が終わった人、月経が不順な人、乳がんを含めた婦人科癌にかかった人は要注意です。

日本人はカルシウムの摂取が低いとされていますので、カルシウムやビタミンDなどの栄養摂取や適度な運動が骨粗鬆症予防に大事であることは言うまでもありませんが、骨粗鬆症の人は適切な治療を受けることが大切です。

日本において骨粗鬆症の治療薬は、現在のところ骨の破壊を抑える薬が中心で、ビスフォスフォネート製剤と、塩酸ラロキシフェンが代表的です。どちらも骨粗鬆症に伴う痛みの軽減効果も報告されています。骨粗鬆症の原因からも明らかなように、女性ホルモンも骨の強さを取り戻す働きがあります。ただし、副作用や健康保険制度の問題もあり、医師とよく相談してから使用すべきです。ビスフォスフォネートのうちアレンドロネートとリセドロネートは週に1回、起床時に服用しますが、毎日内服するタイプもあります。塩酸ラロキシフェンは一日1回、いつでもよい時間に服用します。塩酸ラロキシフェンは骨に対して女性ホルモンと同じように働く薬で、選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)と呼ばれています。そのほかにも、カルシトニン製剤やビタミンK製剤、カルシウム製剤や活性型ビタミンD製剤など治療薬も数多くありますので、医師に相談されてください。

なによりもまず、自分の骨の状態を知ることが大切です。健康で元気な生活を長期間送るためにも、機会を見つけて一度骨密度を測定することをお勧めします。