女性の病気について

のぼせ

のぼせは上半身、とくに顔面がカーッと熱くなって頭に血がのぼるような感覚を指す場合が多い。人によっては「冷えのぼせ」と言って下半身には逆に冷感を覚えることもある。男性に較べると女性に多い症状であるが日常的に寒い所から室内に入った直後や精神的緊張(恥ずかしい、怒り、など)に伴う一過性ののぼせは誰しも経験することである。のぼせやすい人の中には日頃、ストレスが多く運動不足で便秘がち、偏食や過食(とくに肉類)傾向があり刺激物(香辛料、アルコール類)を採り過ぎている場合がある。

のぼせの改善にはまずライフスタイルの見直しが必要である。さらにのぼせの背後には生活習慣病(高血圧、動脈硬化、糖尿病、など)や甲状腺機能亢進症といった疾患がかくれている場合があるので健康診断、等を利用した全身チェックも必要である。のぼせの直接的な原因は末梢血管の拡張と収縮を支配する自律神経系の機能失調と考えられている。女性では閉経前後、いわゆる更年期に出現することが圧倒的に多く、のぼせは更年期障害の代表的症状の1つに数えられる。

更年期は女性にとってきわめてストレスの多い時期であるが、心理的ストレスと卵巣からの女性ホルモン(エストロゲン)分泌の急激な低下とが相まって脳内の視床下部にある体温中枢の機能失調を引き起こし、のぼせを誘発する。更年期ののぼせに対しては低下したエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)が効果を示す例が多い。また、自律神経調整剤や向精神薬が有効な場合もある。年代を問わず心理的ストレスが大きな原因となるのでのぼせに対しては精神療法を含めた抗ストレス療法が重要である。 抗ストレス療法としては漢方医学的アプローチが有効である。 漢方医学ではのぼせの原因は生命エネルギーである「気」の失調と気を全身に運ぶ「血」の循環異常と考えている。 生体にストレスが負荷されると全身をくまなく循環する気の量が低下したり(気虚)、循環が停滞した状態(気うつ)となる。 さらに人によっては上半身から下半身へ巡るべき気が逆流する(気の上衝)気逆という状態が強く現れる場合がある。

一般に、のぼせは気逆によって引き起こされるのでその改善のために気逆を治める効果をもつ加味逍遥散や女神散などが投与される。 さらに、血の循環が滞った状態を「瘀血」と呼ぶが、気の失調と相まってのぼせや冷え性の原因となる。 症例に応じて「駆瘀血剤」と呼ばれる一群の処方、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯などが奏功する。 さらに、古来、服用されてきた紅蔘(いわゆる高麗人蔘)に明らかな抗ストレス作用(自律神経調整作用、向精神作用、など)と共に末梢での血液循環改善作用が報告されている。 漢方医学的には気の失調やお血の改善に有効であり、漢方処方と併用することでのぼせに有効である。