女性の病気について

腰痛

4つ足のネコや犬には腰痛はありませんが、2本足歩行をするヒトでは進化の代償として腰への負担が増大しました。例えば日本の更年期の女性の自覚症状のなかで、肩こり、疲れやすさとともに、多くの方で自覚されるのが腰痛です。更年期の女性にアンケートをとると、約3割の方が腰痛ありと回答され、それ以外の年代の女性でも約1割の方で腰痛の自覚があります。

腰痛の原因はいろいろありますが、腰部の酷使などから起こる腰痛症、体を動かすと痛みが生じる変形性脊椎症、神経の圧迫のため片側の下肢のしびれが起こる椎間板ヘルニア、骨がもろくなる骨粗鬆症などの脊椎の運動器疾患が知られています。しかしその他にも、十二指腸潰瘍などの消化器疾患、腎盂腎炎、腎結石などの泌尿器科疾患、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患、さらにはうつ病や統合失調症といった神経科疾患でも腰の痛みが起こります。なかでも最近目立つのがストレスによる腰痛で、肉体労働者よりもデスクワークの多い管理者などで腰痛が増えることが知られており、これらのことから腰痛を脊椎(背骨)の病気と捉えるよりも、疼痛症候群として一括して原因を探そうという動きがあるほどです。

背骨からくる腰痛は、坐っている時間が長い仕事や足を組んで坐るなど同じ姿勢をとる時間が長い人、合わない靴を履いている人、過度の運動のみならず運動不足で筋力が低下している人などで多くなるため、予防や治療のためには悪い条件を減らす、ストレッチを心がけるなど普段の生活から注意する必要があります。

ストレスからくる腰痛も、同様に心の筋肉が長時間張り詰めた状態からおこり、性格的には生真面目で几帳面、責任感が強く仕事熱心で、とくに知的水準の高い人に多いそうで、ストレス原因の回避ができるとよくなります。不思議なことにストレスに対する抵抗力は幼児期にうける両親の愛情により左右され、この時期の被虐待経験はストレスへの抵抗力を減少させるという実験報告があります。日本ではうつ病の人のうち病院へ行っているのは2割くらいしかいないといわれていますが、長引く腰痛でお悩みの方は背骨の検査と一緒に心の検査も受けてみてはいかがでしょうか。