女性の病気について

過多月経とは?

“生理の量が多い”(過多月経)については月経量を計測して受診しているわけではないため、客観的な評価は難しいと思います。産科婦人科用語解説集では「月経の出血量が異常に多いものを言う。ふつう150ml以上をいう。しかし、臨床的には患者の訴えで判断されるのでそれほど厳密ではないが、通常、その結果として貧血に陥っている場合が多い。」とあります。過多月経が慢性的にある場合、患者さんは異常に慣れてしまっている場合もあり、月経痛や無月経などと比べ、具体的な症状の把握ができず、ともすれば見逃してしまう場合も考えられます。

貧血になることも多いので、「月経血に血の塊が混じることがないか?」とか「昼間に夜用のナプキンをしていないか?」など症状が重要で、それから過多月経の診断になることがあることに注意が必要です。

過多月経の原因と診断

過多月経にはさまざまな原因が考えられ、婦人科器質的疾患、機能性疾患以外に内科的な基礎疾患についても留意しなければいけません。
診断のフローチャートを示します(表1)。

表1 過多月経の原因と診断(準備中)

  1. 婦人科器質性疾患
    主なものとして、良性疾患では子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどが代表的で、30代以降の女性の場合は、これらの婦人科器質性疾患が増えるため、内診、超音波MRI、子宮鏡検査などで診断します。
    また、忘れてはならないものとして悪性疾患である子宮体癌や子宮頸癌が考えられます。出血を契機に始めて婦人科を受診する場合も多く、残念ながら婦人科検診の受診率が低いわが国では、悪性腫瘍の除外診断は非常に重要です。そのため子宮膣部・体部スメア(がん検診)は必要と思われます。
  2. 婦人科機能性疾患
    黄体機能不全や無排卵性周期症などで破綻出血を起こし、結果として過多月経になる場合があります。10代から20代の比較的若年者と閉経近くの40代後半の患者においては、この内分泌的疾患を念頭に置く必要があり、詳細な問診と基礎体温表やホルモン検査を行い診断します。
  3. 内科的疾患
    血液疾患など内科的疾患が基礎にあり、止血凝固機能の異常により結果として過多月経を惹起することがあります。過多月経の精査で結果的に血液疾患が診断される場合もあります。

治療

子宮筋腫、子宮腺筋症など婦人科良性疾患の治療は子宮ごと摘出する単純子宮全摘術、または筋腫だけを切除する筋腫核出術などがあります。挙児希望の有無、子宮温存の希望の有無により、治療方針が選択されます。近年、晩婚、少子化の影響で子宮の温存希望の患者さんも増えています。
近年は鏡視下手術も導入され、低侵襲手術を行うことが可能となってきています。

最後に

過多月経は、気づかず放置され、貧血が進んでから病院を受診することもあります。また、大量出血を主訴に救急外来を受診する場合もあります。また、血液疾患など内科的な疾患の見落としに留意すべきであると思われます。