女性の病気について

避妊

日本人女性を対象としたアンケートで、初めての性交渉にて避妊をした女子は2人に1人であり、2回目以降では20%しか避妊をしていないことがわかっています。また日本産婦人科医学会の行った人工妊娠中絶を行った10代へのアンケート調査でも「避妊をしていない」、「時々しか避妊していない」が90%近くとなっており、避妊が特に若者で行われていない現状があります1)

避妊をしていると答えた場合でも、コンドームの使用が90%以上であり、その他の避妊法が広く知られていないことや、女性が自分からは積極的に避妊を行っていないことがわかっています。

一方欧米では、低用量ピルなどの女性主体の避妊法が広く用いられています。意図しない妊娠やその後の中絶は、女性の心に深い傷を残します。日本でも女性主体の避妊法の普及がのぞまれます。

避妊法

現在日本で行われている方法としては、タイミング(オギノ式)法、コンドームの使用、殺精子剤の使用、薬物添加IUDの挿入、経口避妊薬の内服、卵管結紮や精管切除などの不妊手術などが挙げられます。

各避妊法の失敗率は、タイミング法で24%、コンドームの一般的な使用で15%、殺精子剤で29%、薬物添加IUDで0.1~0.8%、不妊手術で0.5%、経口避妊薬で8%程度とされています。海外と比較してタイミング法やコンドームの使用が多い日本では不完全な避妊が多いと考えられます。

経口避妊薬

日本で認可されている経口避妊薬はエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)の配合剤で、毎日内服することで排卵を抑制します。服用を続けることで生理が軽くなり、生理の量を減らす効果があります。また、排卵痛や月経前症候群の改善や、子宮内膜症性嚢胞の抑制効果、種類によってはにきびの改善などがその他の作用として知られています。また内服によって卵巣がん、子宮体がんのリスクを半減できることが示されています。初経以降の年齢では避妊だけでなくこれらの作用を目的として内服することもよくあります。

避妊効果は服用開始後7日目以降からになるので、それまではコンドームなどの他の避妊法を合わせて使用する必要があります。副作用として静脈血栓塞栓症という静脈に小さい血の塊である血栓ができてしまう病気がある一定の確率で起きることが知られています。血栓の発症率は使用していない人たちで1万人当たり1~5人ですが、経口避妊薬を内服した場合3~9人となります3)。これらは服用開始後4カ月以内に多いとされています。

緊急避妊法

避妊に失敗した場合や、性交を拒否できなかった場合に緊急的に用いられる避妊法です。内服することで排卵を遅らせる効果があります。経口剤の黄体ホルモンであるレボノルゲストレル(LNG)と性交後120時間以内に子宮内に挿入する銅付加子宮内避妊具(copper intrauterine device;Cu-IUD)が本邦では認可されています。経口のLNGは性交後72時間以内に内服すると84%妊娠を阻止できるとされています。可能であればもっと早く内服することで妊娠を阻止できる確率がより高くなるので、数日間様子をみるなどせずに性交渉後早めの受診が勧められます。

文献

  • 1) 本庄 英雄ら:最新女性心身医学.東京都:ぱーそん書房;109-113,2015
  • 2) Hannaford PC et al: Cancer risk among users of oral contraceptives : cohort date from the Royal College of General Practitioner’s oral contraception study. BMJ 335:651.2007.
  • 3) 日本産科婦人科学会/日本女性医学学会編:OC・LEPガイドライン2020年度版.62-64.