女性の病気について

過食症

何らかの心理的ストレスを契機に突然大量の食物を食べ続け、身動きできないほどになりほとんどは自己嘔吐でおさまり、これが習慣化していく疾患である。

過食&自己嘔吐をストレス解消として儀式化していくこともまれではない。しかし、過食と自己嘔吐の後には自己嫌悪や抑うつ感を伴い日常的に気分の波を生じ日常生活に支障が生じることも多々ある。拒食症と同様に病識の欠如が問題であり、心身ともに疲弊してやっと専門医を受診することが多いため、軽快するには年単位(数年以上)を要する。先進国の若い女性に見られる代表的な心身症である。

疾患に関連する要因には患者個人の要因、環境要因、社会文化的要因、生物学的要因などがある。

患者の個人的要因

  1. 人格の特徴(強迫性、完璧主義的要因、他人に気を使うが負けず嫌いで自己主張が強く依存的など)
  2. 認知のゆがみ(全か無か思考、・・・すべき思考で自分を追いつめる傾向)
  3. 自己同一性の問題(自分の生き方、ありのままの自分を肯定的にとらえられるかなど)
  4. 身体イメージの問題(客観的にみて肥満でないのに自分では異常に太っているという感覚)
  5. 同胞や友人との葛藤(同胞や友人が自分よりも注目を集めていると感じこれに否定的な感情をもち自分の存在感に意義を見出せなくなるなど)
  6. ストレス耐性の欠如(現代の若者は衣食住すべての面で挫折や欠乏の体験に乏しい。少子化による過保護な環境など)

環境要因

  1. 家族要因(家族の食生活の問題:食事を通した家族の団欒の欠如、うつ病、アルコール依存の家族歴など)
  2. 社会文化的要因(女性の生き方の変化:女性に職業を求める時代の圧迫と女性の伝統的なあり方への期待との葛藤など、スリムを礼賛する社会:マスコミの影響、グルメ思考:スリムを礼賛する一方グルメを賞賛する傾向など)

生物学的要因

主原因は、上記の心理社会的要因であるが、発症後は中枢性の摂食調節機構に二次的な機能異常が生じていると考えられる。
摂食障害と関連する物質は示唆されている。

  1. 中枢の摂食調節のメカニズム
    視床下部外側野に食欲を促進する空腹中枢があり、腹内側核には食欲を抑制する満腹中枢がある。これらの中枢は内臓から送られてくる情報を延髄の弧束核で処理して受ける。一方、大脳辺縁系や前頭前野と密接に関係し、認知や情動に関する情報をうけこれらが相互に関係しながらより高次の連合野で空腹感や満腹感が形成される。
  2. 摂食に関係あると示唆される神経伝達物質
    ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなど。

検査所見(全身の異常として現れる)

疾患が長期になるほど所見は悪化する。

例 肝機能障害(摂食の増加によりAST,ALT,など上昇)
  膵機能障害(過食と嘔吐の患者は血清アミラーゼが上昇する。急激な過食による急性膵炎は生死にかかわることもある)
  電解質異常(低カリウム血症など:致死の不整脈の原因となりうる)
  消化器系(イレウスなど)

治療

  1. 病識をつけることが重要。(心身ともに疲弊するため早期に治療しないと一生治らないこともあるため)
  2. 精神療法(認知行動療法など)
  3. 薬物療法(過食症に特異的な薬物はないが、対症療法的に抗うつ薬を使用することなどはある。SSRIの中には摂食コントロールに有用なものもある)